2026/02/03 19:35

彫金の歴史は、人が金属を手にした瞬間から始まったと言っても過言ではありません。

ただ形を作るだけでなく、「刻む」「残す」「意味を与える」という行為は、太古の人類にとってすでに特別なものでした。



古代文明と彫金



古代エジプトやメソポタミアでは、金や銀は神聖な素材とされ、装身具や祭祀具に彫金が施されていました。

模様は単なる装飾ではなく、権力・信仰・祈りの象徴。

金属に刻むことは、目に見えない価値を形にする行為だったのです。



日本における彫金



日本では仏具や刀装具の発展とともに、彫金技術が高度に磨かれてきました。

江戸時代には、金・銀・銅を使い分け、わずかな線や凹凸で世界観を表現する技法が確立されます。


派手さよりも、余白。

力強さよりも、静けさ。


日本の彫金は、「主張しない美」を大切にしてきました。



近代、そして現代へ



産業化が進み、ジュエリーが大量生産される時代になっても、彫金は消えませんでした。

なぜなら、彫金は効率のための技術ではなく、人の手の痕跡そのものだからです。


一打ごとに異なる音。

わずかに残る揺らぎ。

それらは機械では再現できない、時間と集中の証です。



彫金とは「残す」技術



彫金は、新しいものを付け加える技術ではありません。

金属を削り、刻み、余分なものを取り除きながら、本質を浮かび上がらせていく技術です。


だからこそ、何百年経っても、

人の手で作られた彫金品には静かな説得力があります。



いま彫金を選ぶということ



現代は、情報も物もあふれる時代です。

そんな時代だからこそ、

時間をかけて作られ、長く使われるものに価値が戻ってきていると感じます。


彫金は古い技術ではありません。

「人が作る意味」を問い続けてきた、現在進行形の技術です。